高血圧

高血圧とは?メカニズムをわかりやすく解説

高血圧とは、血管の中を通る血流が、血管の内側に慢性的に高い圧力をかけている状態を指します。塩分の摂り過ぎや喫煙など、生活習慣の乱れを主な原因として発症する生活習慣病の1つです。また生活習慣病のうち、もっとも死亡との関連が強いと言われています。
高血圧を放置すると、しなやかだった血管が、もろく硬くなる動脈硬化が進行します。すると、心筋梗塞や脳卒中といった、命にかかわる疾患のリスクが高くなります。なお高血圧は、ほとんど症状がありません。そのため、気づかないうちに進行してしまうケースも少なくありません。定期的に血圧を測定し、高血圧の予防と早期発見に努めましょう。

朝と夜、病院と自宅の違いは?診断基準について

日本高血圧学会では、診察室で測定した場合の正常血圧を120/80mmHg未満と定め、高血圧については以下のように定義しています。 なお診断は、診察室血圧と家庭血圧の総合的な判断によります。診察室血圧と家庭血圧の差が大きい場合には、よりリラックスしていると考えられる家庭血圧の結果を優先します。

診察室やクリニックでの血圧

診察室血圧(医療機関の診察室で測定した血圧)を何度か測り、最高血圧が140mmHg以上、または最低血圧が90mmHg以上である場合に、高血圧と判定されます。
診察室は、ご自宅と比べるとどうしても患者様は緊張しやすくなります。無意識に血圧が高くなることもあるため、家庭血圧(自宅で測定した血圧)より、高血圧の定義がやや高く設定されています。

白衣高血圧と仮面高血圧

家庭血圧では正常の範囲である一方で、診察室血圧で高血圧になってしまうことを「白衣高血圧」と呼びます。
反対に、診察室血圧が正常の範囲内で、家庭血圧が高い場合には、「仮面高血圧」となります。

自宅での血圧

家庭血圧は、ご自宅で連続して5~7日測定した血圧の平均値を参考にします。最高血圧が135mmHg以上、または最低血圧が85mmHg以上である場合に、高血圧と判定されます。

早朝高血圧

早朝の家庭血圧が135/85mmHg以上であることを指します。
脳や心臓における血管疾患のリスクが高くなります。

昼間高血圧

日中の 平均値が135/85mmHg以上であることを指します。
仕事、家庭などによる精神的・肉体的ストレスの影響が大きいものと考えられます。

夜間高血圧

夜間の家庭血圧が120/70mmHg以上であることを指します。
脳や心臓における血管疾患のリスクが高くなります。また加齢などに伴う認知・身体機能の低下の影響が大きいものと考えられます。

ストレス性高血圧

仕事、家事、介護、育児などのストレスによって慢性化した高血圧のことを指します。
ただ、通常血圧を測定する場合にはストレスの原因から離れている(仕事が原因であれば、職場を離れて血圧を測定する)ため、発見が難しいことがあります。

高血圧は遺伝や生活習慣などが原因?

高血圧は遺伝や生活習慣などが原因?高血圧は、生活習慣の乱れや遺伝が原因と考えられる「本態性高血圧」と、腎臓疾患・ホルモン異常・薬の副作用などを原因とする「二次性高血圧」に分けられます。このうち、本態性高血圧が高血圧全体の90%以上を占めています。 本態性高血圧の原因とされる生活習慣の乱れには、塩分の摂り過ぎ、喫煙、アルコールの摂り過ぎ、運動不足、野菜・果物不足、ストレス、睡眠不足などがあります。また先述の通り遺伝性が指摘されているため、高血圧の血縁者がいるという方は、より注意が必要と言えます。

初期症状はある?高血圧の症状について

初期を含め、高血圧にはほとんど症状がありません。敢えて挙げるとすれば以下のようなものがありますが、いずれも程度が軽く、また非常に身近な症状であるため、受診には至らないケースが多くなります。 「症状が出たら受診しよう」という考え方では、高血圧の早期発見は困難です。何よりも大切なのは、定期的に血圧を測定することです。

  • 頭痛
  • 動機
  • 肩こり
  • 頭がぼうっとする感じ

初期症状はある?高血圧の症状について

高血圧を放っておくとどうなる?

高血圧を放置するということは、血管に強い圧力がかかり続けるということです。これにより血管が傷つき、硬く、もろくなる動脈硬化が進行します。 動脈硬化は、全身の血管で進行するため、心筋梗塞や脳卒中、あるいは眼底出血など、命を脅かしたり、QOLを低下させる疾患のリスクが高くなります。

高血圧の治療法

高血圧の治療では、食事療法・運動療法が基本となります。必要に応じて、薬物療法を取り入れることがあります。

食事療法

塩分・アルコールの摂り過ぎを控える、野菜・果物を意識して多めに摂ることが大切です。
外食、特にアルコールを飲むようなお店での食事は、味が濃いことも多いため、自炊の割合を増やすという方法が有効です。
また、できる限り禁煙してください。

運動療法

患者様の年齢、お身体の状態に合わせた、適度な運動習慣を身につけましょう。ウォーキング、軽いジョギング、水泳など、有酸素運動がおすすめです。
もちろん、通勤時に1駅分歩く、エレベーターではなく階段を使うといった方法でも構いません。「続けられる」ことが大切です。

薬物療法

高血圧に対する薬物療法では、降圧剤が中心となります。
降圧剤は血圧を下げることを目的として使用しますが、血管に直接作用する、心臓に作用し送り出す血液量を減らす、尿量を増やし血液量を減らす、自律神経に作用し血管の収縮を抑制する、血圧の上昇を招く物質を減少させる等、さまざまな種類があります。
患者様のお身体の状態に合わせて、降圧剤を選定・処方いたします。

食事や運動で改善するポイントとは

高血圧の治療では、食事療法・運動療法が欠かせません。特に、以下の点に気をつけて生活しましょう。


食事や運動で改善するポイントとは

  • 塩分の摂取量を、半分程度に減らす
  • 野菜や果物など、カリウムを豊富に含む食品を意識して摂取する
  • 青魚など、n3多価不飽和脂肪酸(EPAやDHA)を豊富に含む食品を意識して摂取する
  • アルコールの摂り過ぎを控え、できれば禁酒する
  • ウォーキング、軽いジョギング、水泳などの有酸素運動を1日30分以上、週180分以上を目安に継続する
  • 肥満である場合には、食事、運動に気をつけながら適正体重を目指す

コーヒーで血圧は高くなるのか?

アメリカのジョンズ・ホプキンズ大学で行われた調査によると、コーヒーを飲む習慣のある人は、そうでない人と比べて血圧が高いということが分かりました。
しかし、実際に60歳までに高血圧を発症したかどうかを調べると、両グループの間に差はありませんでした。この研究から言えるのは、コーヒーを飲むことで一時的に血圧が高くなるものの、高血圧の発症に影響することはないということです。
また別の研究では、1日に3~6杯のコーヒーを飲む人は、コーヒーを飲む習慣のない人と比べて、高血圧のリスクが低かったという報告もあります。
少なくとも、「コーヒーをよく飲むから高血圧になる」ということはありませんので、ご安心ください。

※ただし、ミルクや砂糖の入ったコーヒーの飲み過ぎは、高血圧や糖尿病、脂質異常症などのリスクを上昇させる恐れがあります。缶コーヒーの場合はブラックであっても添加物が入っていますので、習慣的に飲むコーヒーとして最適なのは「ドリップしたブラックコーヒー」ということになります。